10月号「死後事務委任契約」という選択肢
2025.10.01
総務省の公表によると、2025年9月15日時点の日本の65歳以上の人口は3619万人で、総人口に占める割合は29.4%と過去最高になったそうです。年齢階級別にみると、70歳以上人口は2901万人(総人口の23.5%)で前年比4万人増、75歳以上人口は2124万人(同17.2%)で前年比49万人増、80歳以上人口は1289万人(同10.5%)で前年比1万人増となりました。
また、厚生労働省の調査によると、65歳以上の人がいる世帯は2760万4000世帯(全世帯の50.3%)のうち、単独世帯(おひとりさま)が903万1000世帯(65歳以上の人がいる世帯の32.7%)と最も多くなっています(厚生労働省2024(令和6年)国民生活基礎調査より)。
日本社会が超高齢化・多死社会へと構造が変化しているなか、終活という言葉をよく耳にしますが、実際に終活に取り組む際には様々なケースがあります。
特に、身近に頼れる人がいないおひとりさまの場合、ご自分が亡くなった際のことを考えると、誰に相談すればいいのか、どこから手を付ければいいのか悩まれている方が多いと思います。また、高齢化に伴い、家族以外の専門家などの第三者に死に関する手続き支援を委託したいというニーズも増えており、おひとりさまの場合「死後事務委任契約」について検討される方が増えています。
死後事務とは、主に、看取り、遺体の引き取り、葬儀、火葬、納骨等の「葬送」という事務と役所への届出等の諸手続き、電気・ガス・水道・新聞・電話等の私法上の契約に関する事務という2つに分けられます。「死後事務委任契約」は、被相続人(委任者)が生前お元気なうちに、専門家などの第三者(受託者)に対し、死後事務を委託するという契約です。この契約により、委託者の死後に実施される死後事務に伴う費用の支払いや、遺品整理・処分の財産処分等について、委任者である被相続人の遺志が実現されることなります。
被相続人の遺志の実現という点で、被相続人が生前お元気なうちに作成する遺言と性質が似ています。しかし、遺言が主に財産の処分に関するものであるのに対し、死後事務委任契約は被相続人の死そのものについて、亡くなられる際から関わる部分が多く、財産に関するものに限られない事務である点で、被相続人の死そのものに深く携わることになります。
したがって、生前お元気なうちからの具体的な対策が必要です。自分らしい最期を迎えるためにも、どのような最期を迎えたいのか、まずは検討することが大切です。
ワンストップ相続のルーツ
代表 伊積 研二