6月号「直系尊属から贈与を受けた場合の非課税」
2025.06.02
直系尊属(父母・祖父母等)から贈与をうけた場合、3つの非課税の特例があります。今回の相続ニュースでは、この3つの非課税の特例の内容ついてご紹介します。
(1)直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合
令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に、18歳以上の方が、自己の居住の用に供する一定の家屋の新築・取得・増築等(これらと共にする敷地の用に供されている土地等の取得も含む)のための資金を、直系尊属から贈与により取得した場合には、一定の金額まで非課税となります。
非課税金額は、良質な住宅用家屋の場合は1,000万円、それ以外の住宅用家屋の場合は500万円までの贈与税が非課税となります。なお、暦年贈与の年間110万円や相続時精算課税制度の基礎控除額110万円及び特別控除額2,500万円と併用することができます。
受贈者の要件は、❶贈与者の直系卑属(子、孫等)であること、❷贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること、❸贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること(家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は合計所得金額が1,000万円以下であること)です。
次の要件をみたす日本国内の家屋が適用対象となります。❶家屋の床面積が40㎡以上240㎡であること(家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は合計所得金額が1,000万円以下であること)、❷中古住宅の場合は、1982年1月1日以後に建築されたこと、または、現行の耐震基準を満たすこと、❸店舗併用住宅の場合、床面積の2分の1が居住用であること、❹増改築等の場合は、工事費用が100万円以上であること(居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上であること)。
この特例を受ける場合には、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告書に特例の適用を受ける旨記載した一定の書類を添付して、所轄税務署長に提出する必要があります。
なお、本特例が適用された住宅取得等資金の贈与については、相続開始前7年以内の贈与であっても、相続税の課税価格に加算されません。
(2)直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税
平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に、30歳未満の方が、直系尊属からの贈与により教育資金を一括贈与された場合には、1,500万円(学校等以外に支払う金銭は500万円を限度)まで贈与税が非課税になります。ただし、受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、適用することができません。
教育資金とは、学校等に対して直接支払われる入学金や授業料などの学校への納付金、学用品の購入、修学旅行費用、学校給食費等や、学習塾や習い事などの学校等以外に直接支払われる金銭をいいます。
本制度の適用を受けるためには、金融機関で教育資金口座の開設等を行ったうえで、教育資金非課税申告書をその口座の開設を行った金融機関等の営業所等を経由して、信託や預入などをする日までに、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。
教育資金口座からの払出し及び教育資金の支払いを行った場合には、その支払いに充てた金銭に係る領収書等でその事実を証する書類等を、金融機関等の営業所等に提出する必要があります。
教育資金口座に係る契約は、❶受贈者が30歳に達した場合(30歳に達した日において学校等に在学している場合または教育訓練を受けている場合を除く)には受贈者が30歳に達した日、❷受贈者がその年中のいずれかの日において学校等に在学した日又は教育訓練を受けた日があることを、金融機関等の営業所に届けなかった場合には、その年中の12月31日、❸受贈者が40歳に達した場合には、受贈者が40歳に達した日、❹口座の残高が0(ゼロ)になり、かつ、結婚・子育て資金口座に係る契約を終了させる合意があった場合には、合意に基づき終了する日、➎受贈者が死亡した場合には、受贈者の死亡日、のいずれか早い日に終了します。
なお、➎受贈者が死亡した場合、契約終了時に教育資金口座に残額がある場合には相続税の課税対象となります。相続税の2割加算対象となる孫が贈与を受けていた場合には、2割加算の対象となります。ただし、受贈者が23歳未満である場合、受贈者が学校等に在学しているか教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合には、相続税の課税対象にはなりません。
(3)直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税
平成27年4月1日から令和9年3月31日までの間に、結婚・子育て資金管理契約の締結日時点で18歳以上50歳未満の方が、直系尊属からの贈与により結婚・子育て資金を一括贈与された場合には、1,000万円(結婚費用は300万円を限度)まで贈与税が非課税になります。ただし、受贈者の前年の所得金額が1,000万円を超える場合は適用されません。
結婚に際して支払う金銭とは、例えば、挙式費用や衣装代等の婚礼費用、結婚に伴う新居費用や転居費用等をいいます。また、妊娠・出産及び子育てに関する金銭として、妊婦検診や分娩、不妊治療等の費用、子ども(未就学児)の医療費や保育園・幼稚園の費用などをいいます。
本制度の適用を受けるためには、金融機関で結婚・子育て資金口座の開設等を行ったうえで、結婚・子育て資金非課税申告書をその口座の開設を行った金融機関等の営業所等を経由して、信託や預入などをする日までに、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
結婚・子育て資金口座からの払出しおよび結婚・子育て資金の支払いを行った場合には、その支払いに充てた金銭に係る領収書等でその事実を証する書類等を、金融機関等の営業所等に提出する必要があります。
結婚・子育て資金口座に係る契約は、❶受贈者が50歳に達した場合、❷口座の残高が0(ゼロ)になり、かつ、結婚・子育て資金口座に係る契約を終了させる合意があった場合、❸受贈者が死亡したこと、のいずれかに該当する場合に終了します。
なお、❶❷の場合、契約終了時に結婚・子育て資金口座に残額がある場合には贈与税の課税対象となります。❸の場合には、残額があっても贈与税は課税されませんが、死亡時に残額がある場合には、相続税の課税対象となり、相続税の2割加算対象となる孫が贈与を受けていた場合には、2割加算の対象となります。
このように、直系尊属から贈与を受けた場合、3つの非課税の特例があります。相続対策の1つとして検討されてみてはいかがでしょうか。
ワンストップ相続のルーツ
代表 伊積 研二