3月号「相続人による確定申告が必要な場合について」
2021.03.01
今年も確定申告の時期となりました。
そもそも、確定申告とは、納めるべき所得税や住民税を計算する前提となる1月1日から12月31日までの所得と納税額を計算し、翌年の2月16日から3月15日までの間に、所得額を国に申告することをいいます。したがって、相続は相続税の対象となる場合なので、所得税の対象となる確定申告は不要となるのが原則です。しかし、相続によって所得(収益)が得られるなど、所得税の対象と判断される場合には、(準)確定申告が必要です。
そこで、今月号では、相続人による確定申告が必要となる主なパターンについてご紹介します。
1.相続財産を売却して収益を得た場合
相続財産を一定期間内に売却(譲渡)した場合、譲渡所得が生じますが、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できる「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」制度があります。この制度は、以下を満たす場合に認められます。
①相続または遺贈によって財産を取得していること
②相続税が課税されていること
③相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以降3年を経過する日までに売却(譲渡)していること
取得費に加算できる相続税額は、以下の計算式で決められます。
取得費加算額=その人の相続税額×売却した財産の相続税評価額÷相続税の課税価格(債務控除前)
相続税の申告期限から3年以内に売却することが要件となりますが、この特例の適用を受ければ取得費が増えることで譲渡所得税の計算上、課税譲渡所得を抑えることができ、納税する所得税や住民税を節税することができます。
ただし、この特例を受けるためには確定申告を行わなければなりません。
2.相続した財産によって収益を得ることになった場合
相続人が賃貸物件(アパート、マンションなど)を相続した場合、賃貸物件から得られる賃料などの収益は相続人の収入(所得)になりますので相続人は確定申告をしなければなりません。
3.相続人が相続財産を寄附した場合
相続によって得た財産を、相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内)までに国や地方公共団体、特定の公益法人など一定の団体に寄附した場合は、その寄附した財産は相続財産に含めずに相続税を計算するほか、所得税の寄付金控除を受けることができるとする特例があります。この所得税の寄付金控除を受ける際には、確定申告が必要です。
以上が相続人による確定申告が必要となる主なパターンです。
なお、今年の確定申告・納税の期限は、新型コロナウイルスの影響を受けて、4月15日まで延長されています。しっかりと期限内に確定申告・納税をされますようご準備ください。また、今年はコロナ対策のため、e-Tax(国税電子申告・納税システム)をご利用ください。e-Taxとは、国税に関する各種の手続について、インターネット等を利用して電子的に手続が行えるシステムです。初めて自分で確定申告される方は、国税庁ホームページ・確定申告書作成コーナーを参照ください。また、自分では難しいと思われる方は、お近くの税理士事務所に確定申告を頼まれてください。
ワンストップ相続のルーツ
代表 伊積 研二