10月号「認知症に備える」
2023.10.02
超高齢化社会の到来とともに、認知症患者の数も年々増加しています。日本における65歳以上の認知症患者数は、2020年に約602万人、2025年には約675万人と、65歳以上の5.4人に1人が認知症患者になると予測されています(【出典:「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」,2015年3月,二宮利治】)。
よく「近頃もの忘れがひどくて」「認知症かな?」という会話を耳にします。しかし、認知症は、単なる加齢によるもの忘れではなく、様々な原因により脳細胞が死んでしまう又は働きが悪くなり、記憶・判断力などの障害が起き、日常生活に支障をきたす病的状態をいいます。認知症を引き起こす病気のうち、もっとも多いのがアルツハイマー型の認知症です。
脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状が記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能の低下など中核症状と呼ばれています。例えば、探し物などをしていて誰かが盗ったなどと他人のせいにしたりすることがあったり、しまい忘れや置き忘れが増えていつも探し物をしているなどの具体的症状が挙げられます。
認知症は、加齢、遺伝性のもの、高血圧、糖尿病などの生活習慣病、喫煙、頭部外傷、難聴などが危険因子とされていますが、運動や食事、余暇活動、社会的参加、認知訓練、活発な精神活動等が防御因子とされています。特に、認知症の発症予防については、運動、口腔に係る機能の向上、栄養改善、社会交流、趣味活動などの日常生活における取り組みが、認知機能低下の予防につながる可能性が高いとされています。したがって、認知症を日頃から予防するためには、食生活などの生活習慣を改善して高血圧や糖尿病になるリスクを低減させたり、地域での活動や健康体操などの活動などに積極的に参加したりすることも有効な方法の一つだと思います。
判断能力の低下に伴うリスクへの備えとしては、財産管理をどのようにしておくか、という備えが大切です。有効な方法の一つとして、任意後見契約があります。任意後見契約は、ご本人がお元気なうちに、あらかじめ任意後見人や委任内容を決定しておき、本人の判断能力が不十分になった際に任意後見人が本人の代わりに財産管理などをしてもらう制度です。ご自分の判断能力が不十分になった場合に備えて、金融機関の預貯金の入出金、施設の入所契約、不動産の売却、賃貸物件の管理及び立替などの財産の管理を、ご自分が信頼できるご家族等にお願いしておくことができます。この任意後見契約は、公正証書遺言の作成と一緒に作成されることが多いのですが、公正証書で作成する必要があります。これにより、法律上の権限が付与されることになり、もしものときに備えることができます。
このような有効な方法があるということを頭の片隅に入れていただいて、老後を元気に安心して生活できるように、また、長生きができるように、お元気なうちに具体的に検討されてみてはいかがでしょうか。
ワンストップ相続のルーツ
代表 伊積 研二