6月号「遺言とエンディングノート」
2023.06.01
いわゆる「終活」という言葉はいつから注目されるようになったのでしょうか。今から約10年前、2012年の流行語大賞に、終焉を考える活動という「終活」という言葉がノミネートされ、その頃から「エンディングノート」も一般に知られるようになってきました。現在では、書店でも多くのエンディングノートが販売されています。
遺言とエンディングノートには、違いがあることをご理解いただいているでしょうか。遺言とは、民法という法律に定める方式に従うことで、法律上の効力を有するものです。主に、ご自分で書く自筆証書遺言や公証人と作成する公正証書遺言が挙げられます。他方、エンディングノートには特に決められた方式も法律もなく、遺書(一般に、死後に残された人に宛てた手紙)とも異なり、本人が人生の終わり方まで記入するものとされており、何ら法的効力がないものです。何でも自由に書けるので、人生の振り返り(自分史や履歴、重要な出来事など)、万一のことが起こった際に連絡して欲しい人の連絡先や葬儀方法の希望など、自分の要望についても記しておくことができます。
また、エンディングノートは遺言の付言事項(ふげんじこう。補足、法的な効力はない。)のような形で活用することができます。例えば、公正証書遺言の場合、付言事項として遺言者本人がどうしてこのような遺言を作成するのかという思いを伝えることができますが、作成時に長々と思いを書き連ねることは稀で、簡潔に書き記されるのが通常です。しかし、遺言の付言だけでは、家族への感謝の気持ちを伝えるのには不十分である場合もあります。そこで、遺言に添えてお手紙を書くか、エンディングノートを作成し、家族への感謝の思いなどについて書いておくのも一つの方法だと思います。
さらに、エンディングノートの作成は、これまでの自分の棚卸し(財産・人間関係なども含む)という性質もありますので、遺言適齢期ではない比較的若い方も作成しやすいものだと思います。「遺言を作成するのはまだちょっと早いから…」と思われる方も、エンディングノート作成に取り掛かることで頭の中が整理され、遺言作成のきっかけにもつながると思います。
まだ遺言を作成するのは早いと思われている方も、まずはエンディングノートの作成に取り組んでみられてはいかがでしょうか。また、いつ万一のことが起こるかわからないので、遺影のご準備も併せてされておくのもお勧めいたします。
しかしながら、やはりエンディングノートには法的効力がありませんので、ご自分の大切な財産を誰にどのように遺すかについては、やはり遺言の作成が必要です。また、遺言は民法の方式に従って作成する必要がありますので、お元気なうちに作成されることをお勧めいたします。
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ワンストップ相続のルーツ
代表 伊積 研二