相続ニュース

このコーナーでは、相続に関する情報をお届けします(毎月1日更新)

12月号「改正住宅セーフティネット法について」

2025.12.01ニュース

本年10月1日に、改正された住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(以下、「住宅セーフティネット法」)が施行されました。住宅セーフティネット法とは、高齢者、障害者、子育て世帯、被災者、低額所得者などの「住宅確保要配慮者」(以下「要配慮者」)が賃貸住宅に円滑に入居できるよう、民間賃貸住宅の供給を促進するための法律です。今後、高齢者の増加等により要配慮者の増加が見込まれています。しかし、要配慮者への賃貸借契約については、賃貸人の視点からみれば、賃借人である要配慮者の孤独死や死亡時の残留物処理、家賃滞納等についてリスクが伴います。そこで、改正法では、賃貸人及び要配慮者が安心して住まいを提供及び確保できるよう、主に次の3点について改正がなされましたので、簡潔にご紹介いたします。

改正内容の概要については次のとおりです。

1.大家(賃貸人)と要配慮者(賃借人)の双方が安心して利用できる市場環境の整備

①「賃貸借契約が相続されない」仕組みの推進

通常賃借権は相続されますが、この仕組みでは賃借人の死亡時まで賃貸借契約が継続し、死亡時に契約が終了する終身建物賃貸借の認可手続を、住宅ごとの認可から事業者(賃貸人)の認可へと簡素化します。これにより、大家側は、賃借人死亡時に契約解除のための相続人探しが不要となり、次の契約までの手続きをスムーズに進めることができるようになります。

②「残置物処理に困らない」仕組みの推進

入居者死亡時の残置物処理を円滑に行うため、居住支援法人の業務に、入居者からの委託に基づく残置物処理を追加します。例えば、単身高齢者(60歳以上)が賃借人の場合等の利用が想定されています。

③「家賃の滞納に困らない」仕組みの創設

要配慮者が利用しやすい家賃債務保証業者を国土交通大臣が認定します。住宅金融支援機構(JHF)の家賃債務保証保険により、認定家賃債務保証業者の要配慮者への保証リスクが低減されます。

④「入居後の変化やトラブルに対応できる」居住安定援助賃貸住宅(以下「居住サポート住宅))による大家の不安軽減

居住支援法人等が、要配慮者のニーズに応じて、安否確認、見守り、適切な福祉サービスへのつなぎを行う住宅(居住サポート住宅)の供給を促進します。入居する要配慮者は、認定保証業者が家賃債務保証を原則引受けします。

2.居住支援法人等が入居中サポートを行う賃貸住宅の供給促進

居住支援法人等が大家と連携し、要配慮者のニーズに応じて、①日常の安否確認・見守り(ICT等による安否確認、訪問等による見守り)、②生活・心身の状況が不安定化した際の福祉サービスへのつなぎを行う住居(居住サポート住宅)の創設、供給促進が予定されています。

3.住宅施策と福祉施設が連携した地域の居住支援体制の強化

国土交通大臣及び厚生労働大臣が共同で基本方針を策定します。また、市区町村による居住支援協議会設置を促進(努力義務化)し、住まいに関する相談窓口から入居前・入居中・退去時の支援まで、住宅と福祉の関係者が連携した地域における総合的・包括的な居住支援体制の整備を推進します。

このように、住まいの確保にお困りの方と大家さんの双方により安心できる制度が開始されます。この改正によって、皆が安心して暮らせる社会になることを期待します。

なお、本制度の詳細については、「国土交通省 住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について」をご参照ください。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

11月号「『人生100年時代』の備え」

2025.11.04ニュース

先月の相続ニュースでもお伝えしましたが、日本社会では、超高齢化・多死社会へと構造が変化し、「人生100年時代」といわれるように100歳まで生きることは珍しいことではなくなってきています。実際に、2025年9月1日時点の住民基本台帳に基づく100歳以上の高齢者数は、前年より4644人増加し、9万9763人となり、100歳以上の人口は55年連続で増加しています。内訳は、女性が全体の88.0%を占めており、女性が男性より圧倒的に長生きをしています。

「人生100年時代」と併せて、「長生きのリスク」という言葉もよく聞くようになりました。これは、長生きをすればするほど「経済的なリスク」がある、つまり生きるためのお金(生活費、医療費など)がかかるということです。現役時代から貯蓄していた方でも、年金だけでは暮らせない方が多く、これまでの貯蓄を取り崩して生活してきたけれども、長生きすればするほどお金が足りなくなってくるという不安が生じます。

最近では、つみたてNISAやiDeCoなどの長生きに備える商品が多くなってきましたが、物価も上昇している今ではお金に働いてもらう必要性を感じていらっしゃる方も多いと思います。

今回の相続ニュースでは、「長生きのリスク」の経済的リスクに備える部分については、別にお話するとして、長生きをする際の「判断能力低下のリスク」、いわゆる認知症対策についてお伝えします。

なぜ、認知症対策が必要かと言いますと、認知症と診断されてしまうと、財産が凍結してしまうという点にあります。つまり、本人が認知症と診断されると、何ら対策を講じていなければ、預貯金の引出しや解約、不動産の売却やアパートなどの収益物件の管理ができなくなってしまいます。なぜなら、これらの行為は法律行為だからです。認知症と診断されてしまうと、本人はもはや法律行為をすることができず、本人の家族が日常に必要な費用を立て替えて支払うなどの負担強いられることになります。

そこで、認知症対策の基本としては、「任意後見制度」と「家族信託」という制度を利用することが考えられます。「任意後見制度」については、詳しくは、今年の4月号相続ニュースをご参照ください。

「家族信託」は、委託者(財産の管理を託す人)である本人と、受託者(財産の管理を託される人)である家族、受益者(通常、本人)のために信託財産の管理を受託者に託すという内容の契約を締結します。例えば、高齢の親(委託者)が子ども(受託者)に、自分の認知症対策として、自宅や自分の預金の管理を託すことで、認知症になった場合でも、財産が凍結することを回避することができます。なお、自分の財産のうち、どの財産を信託契約で管理してもらうかについては、家族信託の契約書にて、具体的な契約内容を自由に決めることができます。

ただし、いわゆる「おひとりさま」の場合は、親族などのサポートを受けることが難しいのがほとんどなので、家族信託を利用することが難しいのが現状です。このような場合には、信頼できる第三者に財産管理を依頼するという「任意後見制度」を活用することが考えられますし、信託会社や信託銀行などの商事信託などの利用も有効です。

これらの対策ができるのは、判断能力が低下するまでの間のみです。時間が経てば経つほど不利になってきますので、早めの行動が大切です。何から始めたらよいのかお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

10月号「死後事務委任契約」という選択肢

2025.10.01ニュース

総務省の公表によると、2025年9月15日時点の日本の65歳以上の人口は3619万人で、総人口に占める割合は29.4%と過去最高になったそうです。年齢階級別にみると、70歳以上人口は2901万人(総人口の23.5%)で前年比4万人増、75歳以上人口は2124万人(同17.2%)で前年比49万人増、80歳以上人口は1289万人(同10.5%)で前年比1万人増となりました。

また、厚生労働省の調査によると、65歳以上の人がいる世帯は2760万4000世帯(全世帯の50.3%)のうち、単独世帯(おひとりさま)が903万1000世帯(65歳以上の人がいる世帯の32.7%)と最も多くなっています(厚生労働省2024(令和6年)国民生活基礎調査より)。

日本社会が超高齢化・多死社会へと構造が変化しているなか、終活という言葉をよく耳にしますが、実際に終活に取り組む際には様々なケースがあります。

特に、身近に頼れる人がいないおひとりさまの場合、ご自分が亡くなった際のことを考えると、誰に相談すればいいのか、どこから手を付ければいいのか悩まれている方が多いと思います。また、高齢化に伴い、家族以外の専門家などの第三者に死に関する手続き支援を委託したいというニーズも増えており、おひとりさまの場合「死後事務委任契約」について検討される方が増えています。

死後事務とは、主に、看取り、遺体の引き取り、葬儀、火葬、納骨等の「葬送」という事務と役所への届出等の諸手続き、電気・ガス・水道・新聞・電話等の私法上の契約に関する事務という2つに分けられます。「死後事務委任契約」は、被相続人(委任者)が生前お元気なうちに、専門家などの第三者(受託者)に対し、死後事務を委託するという契約です。この契約により、委託者の死後に実施される死後事務に伴う費用の支払いや、遺品整理・処分の財産処分等について、委任者である被相続人の遺志が実現されることなります。

被相続人の遺志の実現という点で、被相続人が生前お元気なうちに作成する遺言と性質が似ています。しかし、遺言が主に財産の処分に関するものであるのに対し、死後事務委任契約は被相続人の死そのものについて、亡くなられる際から関わる部分が多く、財産に関するものに限られない事務である点で、被相続人の死そのものに深く携わることになります。

したがって、生前お元気なうちからの具体的な対策が必要です。自分らしい最期を迎えるためにも、どのような最期を迎えたいのか、まずは検討することが大切です。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

9月号「認知症になる前に」

2025.09.01ニュース

超高齢化社会、人生100年時代の到来とともに、検討しておいた方がよいこととして、長生きのリスク、認知症のリスクが挙げられます。認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、2024年1月1日に「認知症基本法」が施行されましたが、ご自分の意思を最後まで反映させるためには、やはり早めの対策が必要です。今月号では、認知症になる前にしておいた方が良いことについてご説明します。

検討した方が良い事項としては、まず現状を把握し、今後どのように過ごしたいのか、最後はどのように迎えたいのかを予めプランニングし、実現方法について具体的に検討すること、そして重要なのは財産の管理方法について検討するということが挙げられます。

①財産の把握(プラスの財産・マイナスの財産、どこにあるのか)

被相続人が亡くなり相続が開始すると、相続人は、悲しみのなかお葬儀など故人とのお別れをするとともに、相続税が発生するか否かにかかわらず、相続手続きや遺産分割協議のために、財産目録を作成するなど、財産の調査を行わなければなりません。特に、相続税申告が必要な場合には、相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告及び納税をしなければなりませんので、財産の把握は早い方が有利です。

具体的には、プラスの財産(預貯金、現金、有価証券等の金融資産、不動産など)とマイナスの財産(借入金、保証債務、未払金など)を把握し、できれば生前に預貯金の預け先やローンなどの借入先などは具体的に把握されておいた方が良いと思います。

なお、プラスの財産よりもマイナスの財産が大きい場合には、相続放棄や限定承認などの手続の期限が相続開始から3か月以内なので注意が必要です。

また、近年では、ネット銀行やネット証券などの「デジタル資産」やオンラインショッピングの「未払い債務」などのデジタルサービスを利用する人が多くなっています。このような資産や債務を調べるためには、本人が設定したIDやパスワードが必要です。そのような情報は、本人が家族に伝えていない場合は、いざというときに困りますので、何らかの工夫をして家族が分かるようにしておくことが大切です。

②ライフプランニング(医療・介護・最期はどこで迎えたいか(終のすみか))

お元気なうちに、どのような医療や介護を受けたいのか(在宅医療など)についても検討しておくことが大切です。さらに具体的には、自宅で医療や介護を受けるのか、施設に入るのか、施設でお世話になる場合の必要な資金などについても検討されておく必要があります。

また、ご自分がもしもの時にどのような医療を望むのか(終末医療)、最期はどこで迎えたいのかについても検討しておいた方が、ご家族が悩まれなくて済むので検討していただきたい事項の一つです。

③財産凍結対策(成年後見制度・任意後見制度・家族信託など)

認知症と診断されてしまうと、判断能力が問題とされ、これまでのように自由に法律行為ができなくなります。そうすると、財産が凍結状態になってしまい、これまでのように自由に預貯金を下ろしたり、不動産を売却したり、遺言書を作成することができなくなります。したがって、そのような状態になる前に、財産管理の方法をどのようにするのかについて検討しておく必要があります。

具体的には、法定後見制度を利用するのか、任意後見制度や家族信託などの方法を利用するのか、ということです。身近に財産管理を任せたい方がいらっしゃる場合には、任意後見制度や家族信託を利用することができますが、そうでない場合には法定後見制度を利用することになります。なお、「認知症」によって成年後見制度を利用するケースが最も多く、全体の約6割を占めているようです。

このように、認知症と診断されると、判断能力がないとして、生前贈与や遺言作成などの相続前の対策ができなくなります。そうなってしまう前に、相続対策はお元気なうちに取り組んでいただきたいものです。また、特に前記②や③を実現するためには、ご家族の協力が必要になる場合もありますので、ご家族と一緒に話し合っておくことが大切です。

何をどのようにしたらいいのか分からないとお考えの方は、お気軽に当センターまでご相談ください。ご相談は無料です。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

8月号「相続分の譲渡」

2025.08.01ニュース

相続分の譲渡とは、共同相続人の一人が、遺産分割協議前に自分の相続分(例えば遺産の3分の1)を、他の相続人や第三者に譲渡することをいいます。譲渡を受けた他の相続人等は、譲渡した相続人の地位をそのまま承継するので、個々の財産上の持ち分の譲渡とは異なり、プラスの財産もマイナスの財産も包括的に譲渡(ただしマイナスの財産については、相続分の譲渡人も併存的に債務を負担し続けると解するのが通説です。)することになります。したがって、相続分を譲渡した相続人は、遺産分割協議の地位を失うことになります。

相続分の譲渡のメリットは、遺産分割手続きから早期に離脱することが出来る点にあります。

遺産分割手続きは、相続人全員の意見がまとまらなければ成立せず、話し合いで解決できない場合には家庭裁判所の調停・審判で解決してもらうことになります。調停・審判は長期になるのが一般的です。

遺産の取得を希望せず争いに巻き込まれたくない、多少お金をもらえれば相続分を手放してもよい等と考えている相続人にとっては、相続分の譲渡によって遺産分割手続きの負担から免れることができることはメリットといえます。

なお、相続手続きから離脱する方法として「相続放棄」もありますが、相続分の譲渡でしかできないメリットは、特定の相続人や第三者に相続分を譲渡することができる点です。被相続人の介護に貢献してくれた人に相続分を譲りたいなど、特定の誰かに自分の相続分を譲りたいなどのお考えがあれば、相続分の譲渡は、その思いを実現できるといえます。

他方、相続分の譲渡のデメリットは、相続税や相続債務の負担から逃れることができないという点です。
前述のとおり、相続分を譲渡した相続人が、相続分の譲渡によって相続手続きから離脱したとしても、債権者との関係では、相続分の譲渡をしたことを理由として支払いを免れることはできず、相続分を譲渡した相続人に支払の請求がくるリスクが残ります。したがって、被相続人の負債が多大であり、譲受人の返済が滞るおそれがあるような場合には、大きなリスクを伴うため、慎重にリスク判断をするべきです。

相続分の譲渡の方法については、相続分の譲渡には法律上決められた手続きはありませんので、口頭でも行うことができます。しかし、口頭でのやり取りでは、後日、相続分の譲渡があったことを証明することが困難となりますので、書面を作成しておく方が望ましいでしょう。
特に、相続分譲渡証書は、相続財産に不動産が含まれる場合の登記手続きにおいて必要になります。
相続分譲渡証書については、形式を満たしたものでなければ、後日争いになるおそれがあります。したがって、相続分の譲渡をする際には、弁護士や司法書士等の専門家へご相談されることをお勧めいたします。

なお、弊社は、相続問題についてワンストップで解決支援をいたします。何をどのようにしたらよいかわからないとお悩みの方は、先ずはお気軽にご相談ください。相談は無料です。

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代表 伊積 研二

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