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11月号「事業承継にも関連する相続法改正」

2019.11.01 ニュース

これまでの相続ニュースでは、主に個人の相続からみた相続法改正(民法改正)をご紹介してきましたが、法人の事業承継に関わる面からも影響があります。今回は新民法903条第4項が、どのように事業承継で関わるのかについてご紹介します。

◆特別受益の持戻免除の意思推定(新民法903条第4項) 今回の改正により、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方(例えば夫)の死亡により残された配偶者(例えば妻)に対し、居住用不動産の遺贈又は生前贈与について持戻し免除の意思表示があったものと推定され、配偶者が最終的により多くの相続財産を取得できるようになりました。

新設された規定(新民法903条第4項)の要件は、簡潔には以下のとおりです。

・  婚姻期間が20年以上の夫婦であること

・  居住用不動産であること(「居住の用に供する建物及び敷地」)

・  遺贈又は生前贈与について被相続人の意思表示が推定されること(「民法903条第 1項〈特別受益の相続分の持戻し〉の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定」)

例えば、株式会社甲の株式を全て経営者Aが保有しており、配偶者B、子C、Dがいた場合において、AはCを後継者として甲社の事業承継を望んでいたが、遺言書がないまま死亡したケースで検討してみます。

Aの財産は、甲の株式1,000万円、預金3,000万円、財産総額4,000万円があり、債務はなかったものとします。なお、生前にAはBに対し、老後のことも考えて自宅(居住用不動産)2,000万円を贈与していたとします。

先ず、Aの相続人はB、C、Dですが、Aの遺言書はないので、株式については相続人間で準共有となり、法定相続分により、Bが2分の1、CとDがそれぞれ4分の1ずつの相続分を有することになります。

そこで、Aが望んでいたようにCが後継者となるためには、BCDが遺産分割協議をして株式持分全部をCに集中するように事業承継を進める必要があります。その結果、Cは財産総額からみて、法定相続分4分の1の株式1,000万円を相続します。

次に、居住用不動産については、前述の新法の要件を満たせば、Bへの居住用不動産の帰属は持戻しの対象外となり、Bは預金についても相続分を有することができますので、Dと預金を分割し相続します。 その結果、Bは財産総額からみて、法定相続分2分の1にあたる預金2,000万円を相続することができ、Dは法定相続分の4分の1の預金1,000万円を相続することができます。

これにより、Cに事業承継、Bに老後の生活保障、Dも含めて円満で幸せな相続の実現を図ることができます。

しかし、前述の新法の要件を満たしておらず、Bへの居住用不動産の生前贈与が持戻しの対象になる場合はどうなるのでしょうか。

Aの財産は、甲の株式1,000万円、預金3,000万円に、居住用不動産2,000万円を持戻すことになるため、財産総額は6,000万円になります。 その結果、Bは法定相続分2分の1の3,000万円、CとDはそれぞれ法定相続分4分の1の1,500万円ずつを相続することになります。

これにより、Bは居住用不動産2,000万円と預金1,000万円を相続し、Cは株式1,000万円と預金500万円を相続し、Dは預金1,500万円を相続します。 このように、持戻しの対象になるか否かにより、分割内容と金額が変わってきます。

もし、Aの財産は、甲の株式2,000万円、預金2,000万円、財産総額4,000万円があり、債務はなし、生前にAはBに居住用不動産2,000万円を贈与しており、持戻しの対象にならない場合ではどうなるでしょうか。

財産総額4,000万円を分割するので、Bは法定相続分2分の1の2,000万円、CとDはそれぞれ法定相続分4分の1の1,000万円ずつを相続することになります。 その結果、Bは預金1,000万円と株式1,000万円を相続し、Cは株式1,000万円を相続し、Dは預金1,000万円を相続したとなると、Cは経営権が不安定になります。

現実の相続では、相続人の数、財産の内容と金額、特別受益の持戻しの有無、事業承継の有無などその家族ごとに内容が異なります。そのため、被相続人が生前からしっかりと対策をしておかなければ、残された相続人が困ることになりかねません。 具体的に対策を検討されたい方は、当センターにお気軽にご相談ください。

(参考) 相続税法上においては、既に配偶者保護の規定として、税法上の特例があります(相続税法21条の6)。この規定も、婚姻期間が20年以上の夫婦で居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与があった場合、一定の要件のもとで最高2000万円まで控除することができます。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

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