相続ニュース

このコーナーでは、相続に関する情報をお届けします(毎月1日更新)

令和2年(2020年) 年頭のご挨拶

2020.01.06ニュース

新年明けましておめでとうございます

皆様よいお年をお迎えのこととお慶び申し上げます

さて、今年はどのような年になるでしょうか。

“子年”は、十二支の新しい運気のサイクルが始まる年です。植物に例えると成長に向って種子が膨らみ始める時期で未来へ大いなる可能性を感じさせる年になりそうです。

今年、おかげさまで弊社は設立15周年を迎えますが、これを節目に事業内容をこれまでどおり相続コンサルティングは主軸にするとしても、事業承継コンサルティングにも力を入れていく方針です。

現在、日本の中小企業における事業承継の現状は、2019年版中小企業白書よると、休廃業及び解散件数は約4万7千件にものぼり増加傾向にあります。日本経済を支える中小企業の雇用や技術の損失、さらに、地域経済の衰退へと繋がっており、大きな社会問題になっています。

また、中小企業の最も多い経営者の年齢は69歳になっており、1995年では47歳であったのが、この23年間に経営者の高齢化が大きく進展しています。 これは中小企業の後継者難が増加していること、平均寿命の上昇、事業承継対策への取り組み時期の遅れなどにより、経営者の在任期間が長期化していることが要因となっています。

それから、中小企業の事業承継の方法は、親族内承継(配偶者、子、孫、兄弟姉妹)から親族外承継(役員、従業員、M&A)に大きく変わってきました。 かつては、親族内承継は全体の約90%を占めていたものが、約55%までに減少しており、その代わりに親族外承継が約35%と増加しています。

親族内承継の場合、後継者が決定して実際に引継ぐまでの期間は、約52%が1年以上、内、約24%が3年以上掛かっています。実際には、後継者が決まるまでの期間や引継ぎ後の並走期間もあり、5年以上は掛かります。 一方、親族外承継(M&A)の場合は、約30%が1年以上掛かっていますが、約70%は1年未満の引き継ぎ期間で済んでいます。どちらの方法を選択するにしても、先ず、早い段階で事業承継対策を始めることが重要です。

弊社は、このような状況を踏まえて、対象となる中小企業に事業承継コンサルティング業務を提供し、その企業の存続と繁栄に貢献し、更には社会に貢献することを目的として業務に力を入れてまいります。

今年も、弊社のクライアントとなられた個人や法人の皆様に対して、個々のニーズにマッチした質の高いサービスを提供し、この会社に任せて本当に良かったと思って頂けるように邁進していきたいと考えております。 最後になりましたが、今年一年の皆様のご健康とご多幸をお祈りし、年頭のご挨拶といたします。

  令和2年(2020年)元旦

                           株式会社日本相続センター

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

12月号 「一年を振り返って」

2019.12.02ニュース

皆さまにとってこの一年はどのような年だったでしょうか。 今年5月1日に皇太子さまが天皇陛下に御即位され、新しい天皇皇后両陛下が誕生するとともに、元号も「平成」から「令和」へと改元されるという記念すべき一年でした。

それから、これまでの相続ニュースでもご紹介してきましたように、約40年ぶりに民法の相続法の分野で大幅な改正がなされた一年でもありました。 いずれの出来事も、前の天皇皇后両陛下のご年齢への配慮、高齢化社会への対応という点で、世相を反映する大きな出来事だったと思います。

相続法の主な改正点としては、

配偶者居住権の新設

自筆証書遺言の方式緩和及び法務局での保管制度の新設

遺留分制度に関する見直し

特別の寄与制度の新設

などが挙げられますが、配偶者居住権以外の改正については既に施行されています(配偶者居住権についての施行日は2020年4月1日)。

なお、各法律の詳細につきましては、以前の相続ニュースでご紹介しましたので、ここでは割愛させて頂きます。

税制では、相続に関する税制改正の中でも意外と知られていない改正に、平成30年(2018年)に税制改正された「相続を原因とする土地の相続登記の登録免許税を免税」とする措置があります。

この措置は、相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置です。 通常、不動産の所有者が死亡した場合は、相続を原因とする所有権の移転の登記が必要ですが、法律で登記期限が定められていないために、相続登記が未了のまま放置され、その結果、様々な社会問題が出てきています。

この免税措置は、相続登記の促進を図り、空家などの社会問題を軽減することが目的だと思われますが、2018年4月1日から2020年3月31日まで の間に申請された土地のみの相続登記が対象となりますので、対象となる方は早めに申請された方が良いでしょう。

この制度を活用して、相続登記をしないまま何代もそのままになっていたり、お金がかかるからと相続登記を放置していたり、面倒だからと手をつけないままでいる厄介な状態を改善していただきたいものです。

これから師走も大詰めになります。ただでさえ急かされる気持ちになりますが、できる限り早めに準備をして、穏やかに年末年始を迎えたいものです。 相続も「備えあれば憂いなし」、「転ばぬ先の杖」が必要です。後回しにすればするほど実は厄介ですので、例えば、法改正の再確認やご自分の財産の総決算など今できることから手掛けて、年明けにでも頼れる相続のプロにご相談頂ければと思います。

少し早いですが、今年も一年大変お世話になり、誠にありがとうございました。 来る年が皆様にとって素晴らしい一年となりますようにお祈り申し上げます。

                                      ワンストップ相続のルーツ

                                           代表 伊積 研二

11月号「事業承継にも関連する相続法改正」

2019.11.01ニュース

これまでの相続ニュースでは、主に個人の相続からみた相続法改正(民法改正)をご紹介してきましたが、法人の事業承継に関わる面からも影響があります。今回は新民法903条第4項が、どのように事業承継で関わるのかについてご紹介します。

◆特別受益の持戻免除の意思推定(新民法903条第4項) 今回の改正により、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方(例えば夫)の死亡により残された配偶者(例えば妻)に対し、居住用不動産の遺贈又は生前贈与について持戻し免除の意思表示があったものと推定され、配偶者が最終的により多くの相続財産を取得できるようになりました。

新設された規定(新民法903条第4項)の要件は、簡潔には以下のとおりです。

・  婚姻期間が20年以上の夫婦であること

・  居住用不動産であること(「居住の用に供する建物及び敷地」)

・  遺贈又は生前贈与について被相続人の意思表示が推定されること(「民法903条第 1項〈特別受益の相続分の持戻し〉の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定」)

例えば、株式会社甲の株式を全て経営者Aが保有しており、配偶者B、子C、Dがいた場合において、AはCを後継者として甲社の事業承継を望んでいたが、遺言書がないまま死亡したケースで検討してみます。

Aの財産は、甲の株式1,000万円、預金3,000万円、財産総額4,000万円があり、債務はなかったものとします。なお、生前にAはBに対し、老後のことも考えて自宅(居住用不動産)2,000万円を贈与していたとします。

先ず、Aの相続人はB、C、Dですが、Aの遺言書はないので、株式については相続人間で準共有となり、法定相続分により、Bが2分の1、CとDがそれぞれ4分の1ずつの相続分を有することになります。

そこで、Aが望んでいたようにCが後継者となるためには、BCDが遺産分割協議をして株式持分全部をCに集中するように事業承継を進める必要があります。その結果、Cは財産総額からみて、法定相続分4分の1の株式1,000万円を相続します。

次に、居住用不動産については、前述の新法の要件を満たせば、Bへの居住用不動産の帰属は持戻しの対象外となり、Bは預金についても相続分を有することができますので、Dと預金を分割し相続します。 その結果、Bは財産総額からみて、法定相続分2分の1にあたる預金2,000万円を相続することができ、Dは法定相続分の4分の1の預金1,000万円を相続することができます。

これにより、Cに事業承継、Bに老後の生活保障、Dも含めて円満で幸せな相続の実現を図ることができます。

しかし、前述の新法の要件を満たしておらず、Bへの居住用不動産の生前贈与が持戻しの対象になる場合はどうなるのでしょうか。

Aの財産は、甲の株式1,000万円、預金3,000万円に、居住用不動産2,000万円を持戻すことになるため、財産総額は6,000万円になります。 その結果、Bは法定相続分2分の1の3,000万円、CとDはそれぞれ法定相続分4分の1の1,500万円ずつを相続することになります。

これにより、Bは居住用不動産2,000万円と預金1,000万円を相続し、Cは株式1,000万円と預金500万円を相続し、Dは預金1,500万円を相続します。 このように、持戻しの対象になるか否かにより、分割内容と金額が変わってきます。

もし、Aの財産は、甲の株式2,000万円、預金2,000万円、財産総額4,000万円があり、債務はなし、生前にAはBに居住用不動産2,000万円を贈与しており、持戻しの対象にならない場合ではどうなるでしょうか。

財産総額4,000万円を分割するので、Bは法定相続分2分の1の2,000万円、CとDはそれぞれ法定相続分4分の1の1,000万円ずつを相続することになります。 その結果、Bは預金1,000万円と株式1,000万円を相続し、Cは株式1,000万円を相続し、Dは預金1,000万円を相続したとなると、Cは経営権が不安定になります。

現実の相続では、相続人の数、財産の内容と金額、特別受益の持戻しの有無、事業承継の有無などその家族ごとに内容が異なります。そのため、被相続人が生前からしっかりと対策をしておかなければ、残された相続人が困ることになりかねません。 具体的に対策を検討されたい方は、当センターにお気軽にご相談ください。

(参考) 相続税法上においては、既に配偶者保護の規定として、税法上の特例があります(相続税法21条の6)。この規定も、婚姻期間が20年以上の夫婦で居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与があった場合、一定の要件のもとで最高2000万円まで控除することができます。

ワンストップ相続のルーツ

代表 伊積 研二

10月号 「遺言執行者の権限の明確化」

2019.10.01ニュース

相続法の改正により、遺言執行者の権限が新民法にて明確化されることになりました。 主なポイントは以下のとおりです。 ・遺言執行者の通知義務(1007条第2項の新設) ・遺贈の履行に関する遺言執行者の権限(1012条第2項の新設) ・遺言執行者の復任権の拡大(1016条第1項、第2項) 今月号では、これらのポイントを簡単にご紹介します。

1,遺言執行者とは

遺言執行者とは、端的には、被相続人の遺言内容を実現するため、適正に各種手続きや相続処理を遂行する人をいいます。遺言執行者は、遺言で一人または数人指定できますが(民法1006条、以下同法。)、指定するかどうかは任意です。したがって、遺言で指定されていない場合があります。その場合は、利害関係人の請求によって、家庭裁判所に請求し、指定してもらうこともできます(1010条)。

2,遺言執行者の通知義務(1007条第2項の新設)

これまで、遺言執行者は、遺言執行者になった旨について通知義務が課されていませんでしたが、相続人は遺言の内容や遺言執行者の有無について影響があるので、相続人の利益を保護するため、相続人に対する通知義務を課しました(1007条第2項)。 具体的には、遺言執行者は、遺言執行者に就任した場合、就任を承諾した旨、任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。なお、この通知は、相続人保護の観点から規定されているので、相続人に対して実施すれば足り、相続人以外の受遺者等への通知までは必要ありません。

3,遺贈の履行に関する遺言執行者の権限(1012条第2項の新設)

前述のとおり、遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(1012条第1項)。 新法では、受遺者による履行請求の相手方を明確化するため、遺言執行者が在る場合の遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができるとされたので(1012条第2項)、受遺者は、物の給付や対抗要件具備(登記など)などの履行請求をする場合は、遺言執行者にしなければなりません。

4,遺言執行者の復任権の拡大(1016条第1項、第2項)

遺言執行者は、遺言者が遺言に反対の意思を表示した場合を除き、「やむを得ない事由」がなければ、第三者に復任できませんでしたが、新法により、「自己の責任で」第三者に遺言執行の任務を行わせることができるようになりました。 実際に遺言執行者として相続人が指定されることが多い一方で、必ずしも指定された相続人が相続について十分な知識がないことや、遺言執行の職務自体が広範で適切に処理ができず、適切な遺言の実現が困難な場合があるため、新法では遺言者が遺言で別段の意思を表示しない限り、「自己の責任で」第三者に任務を行わせることができることになりました(1016条第1項)。 その場合、遺言執行者は、相続人に対して、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、相続人に対して第三者を選任及び監督についての責任のみを負うこととされました(同条第2項)。

改正法では、遺言執行者の権利義務がより明確化され、権限も拡大しているところがポイントです。遺言執行者を遺言で指定する際は、これらの点も考慮されて、相続人に任せるのか、予め専門家などの第三者に任せるのかということについても検討されることをお勧めいたします。

                                     ワンストップ相続のルーツ

                                     代表 伊積 研二

9月号 「遺産の一部分割」

2019.09.02ニュース

約40年ぶりの相続法の大改正により、遺産分割に関する見直しが行われました。遺産分割に関する見直しとしては、次の4つの改正点があります。

・婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の遺贈又は贈与

・預貯金の仮払い制度等の創設

・遺産の一部分割

・遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合

今月の相続ニュースでは、遺産の一部分割について、そのポイントをご紹介します。なお、今回の改正後の民法を「新法」と表記します。

〇遺産の一部分割(新法907条)

新法907条 共同相続人は、次条の規程により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

2 遺産の全部又は一部の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議することができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。

3 前項本文の場合において特別の事情があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

※赤字部分が改正箇所(筆者による)

遺産分割は、通常、遺産の全てを一度の話し合い又は調停・審判によって分割するのが原則ですが、遺産の一部分割とは、遺産を構成する財産の一部を他の財産から分離独立させて分割することをいいます。例えば、相続人の合意によって、遺産のうち分割が容易な土地のみを分割したり、相続税の納税に充てるために一部の土地を分割して売却したりすることをいいます。

これまでも遺産の一部分割については、明文の規定はなかったものの、実務上では一定の要件下にて認められてきたこともあり、今回の改正では明文化し、一部分割の要件を明確化しました。

残余遺産が存在する又は存在する可能性があるけれども、相続人間で現段階ではその分割を希望せず、一部のみを分割したいというケースがあることから規定されました。

一部分割が効果的である場合としては、次の場合が挙げられます。

・分割が容易な遺産を先に分割し、分割が容易ではない遺産を後で検討したい場合

・相続税を納税するために、一部の土地建物を売却して換金したい場合

・遺産の範囲について係争中であるが、争いがない一部の遺産を先に分割する場合

○一部分割の制限(新法9072項ただし書)

遺産全体について適正な分割ができなくなるなど「他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」には、一部分割が制限されます。

そもそも一部分割は、特別受益等について検討し、代償分割や換価分割などの他の分割方法も検討したうえで、全体的に見てバランスがとれた分割ができると判断される場合に許されるのであって、一部分割によって最終的にバランスがとれない分割の見通しが立つ場合には許されるものではないからです。

〇留意点など

一部分割が明文化されたことにより、遺産分割の早期解決が可能になると期待されている一方で、一部分割が可能であるがゆえに、山林や空き家などの比較的利用価値が低い財産がそのまま未分割で放置される可能性もあると指摘されています。相続登記が何代もされていない場合など、後々の相続人が苦労するケースも増えるのではないでしょうか。

所有者が不明な土地等を増やさないためにも、一部分割を活用する場合であっても、今が良ければそれでよしという考え方ではなく、自分たちの代で解決できることは解決するという覚悟が必要だと思います。

遺産分割はややこしくなる場合が多いので、やはり新法下においても、遺言などにより生前に自分の遺産については、誰に何を相続させるのかという指定をしておくことが大事だと思います。

                       ワンストップ相続のルーツ

                           代表 伊積 研二

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